久々登場、バッテリーマニア。
今回は放電電流とその温度を測定して高出力を狙いますが、これは北海道での運用を想定しています。
冬場なら全国でもいけると思いますが、夏場の関東なんかではそんなにあっためない方がいいかも…
※データ多くなったんで長々と書いてますが「放電してから充電した方がいいよ」てだけの内容です。
・そもそも電池やバッテリーってどういうしくみなのよ?
一般的に電池やバッテリーって化学反応を起こして電気を作っています。
電気をためているんだろうなあ、と思われがちですが、ためているわけではありません。
例えばニッカド電池だったらオキシ水酸化ニッケルとカドミウムを反応させて電気を作り出しています。
リチウムなんとか電池だったらリチウムの酸化物と黒鉛(グラファイト)なんかを反応させて電気を作っています。
そんで化学反応を起こした物質に電気をかけて反応する前の物質に戻す、という作業が「充電」になります。
・温度ってなんか関係あんの?
一般的に化学反応ってある程度の温度があった方が促進されてエネルギーが大きくなります。
また、あったかい方が電池の内部抵抗が低くなります。
適正な温度は物質によって変わるので、今回はタミヤのLF2200について、その辺の温度がどんなもんか、実際の運用に沿った形で調べたいと思います。
・バッテリーあっためるってどうやって?
単純にバッテリーウォーマーなんか使って、10度刻みくらいであっためて放電特性調べりゃいいんじゃないかな、と思ったんですが、タミグラタミチャレでは
バッテリーウォーマー等について
◇ バッテリーウォーマーの使用、同様の行為は認められません。
て規定があるので、実際の運用としてはバッテリーウォーマーは使えません。
じゃあどうやってあっためようか?
放電させましょう。
ピットでバッテリーに変な塊つなげて青いLED光らせながらピーピー言わせてるの見たことがある方も多いと思います。
あれは放電機つなげてバッテリーを放電する、っていう儀式をやってます。一回放電して充電することでバッテリーの温度を上げて活性化させてるみたいです。
ニッカド、ニッケル水素ではあまりやらなかったことですが、リチウム系の電池は一日に複数回使っても問題無いので放電してから充電する、って方が増えています。
実際一回放電すると随分と変わります。
で、放電電流についてはみんな結構バラバラなんで、どれくらいがいいのか調べてみるか、ってのが今回の企画のきっかけです。
また、ちょっと前にバカみたいな高電流での充電が話題になりましたが、いやいやそれよりやることあるだろ、っていう啓蒙活動てのもあります。
・測定手順
①満充電したLF2200をGD200ディスチャージャーを使いnAで5.4Vまで放電させて温度上昇を測定
②放電終了後すぐに8.8Aで充電し12Aで放電、その際の放電特性を測定
nは10A、20A、30A、にします。昔LF2200で使われてたA123セルのスペックシートでは30A放電までは保証されてるんで多分大丈夫でしょう。
(今LF2200で使われてるのはA123セルでは無いので最大放電電流については不明です)
測定間隔はいつも通り1週間開けてバッテリー休ませる、てことで。
雰囲気温度は22度程度で統一し、どれが一番放電特性良くなるかな、ってことで調べてみます。
※真似してやろう、って方は、LF2200を5.4Vまで放電するとあまり良くないようなので、放電させたら即充電するか、5.8Vあたりで止めておくことをお勧めします。
・使用機材
充電器:iCharger X6
放電器:G-FORCE GD200ディスチャージャー
温度計はテスターについてる熱電対
バッテリーはタミグラ用に買って10回位しか使っていない3本。
GD200は廃盤、現在はアップデートした後継機GD250が売ってます。GD200はMAX30A放電でしたがGD250は35A放電まで可能になってます。すげえ。
ほとんどの充電器には放電機能がついていますが、MAX2Aみたいな低電流でしか放電できなかったり、自分で規制して電流低くしたりするものが多いです
iCharger X6も30A放電の設定はできますが、実際はバランス取りつつ放電するので5A放電になったりします。5A放電ではあんまり熱持たないんでいまいち使えません。
というわけでGD200使います。
・結果
まず30A放電ですが、一気に電圧が下がってしまい全く抜けません。2秒程度で5.4V割って止まってしまうので使えない、ってことで削除しました。タミヤリフェ使ってる分にはGD250はオーバースペック、GD200で十分みたい。
・サンプルA温度遷移
10A放電温度:開始時19度→終了時28度
20A放電温度:開始時21度→終了時30度
・サンプルA放電特性グラフ
下の横軸の数字は、0.5秒が1プロットになっています。
「33」て書いてあったら33×0.5秒で16.5秒ってことね。
「放電無し電圧」てのは1週間前に充電してそのまま放電したデータです。
・サンプルB温度遷移
10A放電温度:開始時22度→終了時29度
20A放電温度:開始時22度→終了時31度
・サンプルB放電特性グラフ
・サンプルC温度遷移
10A放電温度:開始時24度→終了時31度
20A放電温度:開始時23度→終了時32度
・サンプルC放電特性グラフ
・追加実験:加熱してどうなるか
20A放電中にウォーマーかけてあっためます。
LF2200で使われているセルは「-30°C to +60°C」てことなんで60度まで大丈夫。
50度くらいまで上げてみましょうか。
50度にして30分放置、そのまま50度をキープしつつ20Aで放電し8.8Aで充電、ウォーマー外して放電して特性を調べます。
・サンプルA放電特性グラフ
・サンプルB放電特性グラフ
・ サンプルC放電特性グラフ
・結論
まず「先週充電しました」みたいなバッテリーでは全く勝負になりません。
サンプルAでは20A放電後充電したバッテリーと、1週間前に充電したバッテリーでは10秒の時点で0.32V違います。15.5tモーターだと800回転の差。なんとかして当日放充電してください。
グラフ見ると20A放電の方がたれるのが早いように見えるんですが、これはGD200の仕様でカクカクしたグラフなっているからで、実際はこんな感じになっています。
余計なもの削除して近似曲線追加。
10秒の時点で0.057Vの差、その後下がり続けて1分30秒の時点で-0.093Vと逆転しますが、すぐにまた逆転します。
こちらもほぼ同様の動き。
サンプルCは2分30秒でいったん逆転。そして即また逆転。
こんな感じで、3本とも初期は20A放電の方が高い電圧が出て、一旦逆転されるけど再度逆転する、っていう動きになってます。これ結論難しいな。
あっためたやつの結果を加味して、
「高電流で放電して温度上げてから充電した方がいいよ」
ということで締めさせていただきます。
で、10A放電と20A放電、どっちがいいんだ?っていう話しですが、あんまり変わらないんじゃないかな、ってのが正直なところ。
あえて言うなら、この結果とこれまでの経験、サーキットで聞いた話しなんかから見ると、放電電流については15Aから20Aでいいんじゃないかなと思います。
が、20Aの次に30Aってやって失敗してるんで、もしかしたら「22.36A放電が最適!」とかあるかもしれません。18A放電の方がおいしい特性になるかもしれません。暇な方は更なる最適値を探してみてください。おいらは当分20A放電で行きます。時間短くて済むし。
ただ、長期間放置してたり、寒いところから持ち込んだりしたバッテリーは電圧下がってるんで、20A放電するとすぐに5.4V割って止まってしまいます。そういう場合は10Aくらいで放電してあげてください。
ついでに、高電流放電はバッテリーのバランスが崩れる、って話しも聞きますので、古いバッテリー使ってる方は放電電流はあんまり高くしない方がいいかも。バッテリーも定期的に買い替え推奨。
また、タミグラタミチャレではバッテリーウォーマー等であたためるのは禁止ですが、冷えないようにするのは禁止されていないので、こんな感じで包んで放充電するのは今のところ合法です。
これでも結構あったかくなります。
セッティングボードとか机に直置きだと熱持っていかれるんで、ピットタオルの上でやるのがおすすめです。
ただこのネックウォーマー、接続時のスパークで燃えそうなんでその辺は注意。真似する方も十分注意してください。
あっためていい規定だったらあっためた方がいいと思います。
上のグラフはサンプルAのあっためたやつ(約50度)とあっためてないやつ(約30度)の比較です。
最初のうちは0.12Vと大して差はないんですが、2分過ぎても高出力が続くので結構有利、5分レースでもたれにくくなると思います。
再度書きますが、これは北海道での運用を想定しています。
一般的に化学反応って最適温度を超えると鈍くなります。
LF2200がどの程度の温度で反応が鈍くなるかはわかりませんが、温めすぎ、温まりすぎは良くありません。
スペックシートでは60度まで、って書いてあるからそれが目安になるかな。
また、上にも書きましたが、放電については放電に特化したGD200やGD250の使用がおすすめです。
充電器の放電機能はいまいち使い勝手が悪いです。
8A充電できるくらいの普通の充電器持ってたら、iChargerに買い替えるよりも放電機買う方が先じゃないかな、と思います。レッツ購入。